子どものワキガ(腋臭症)とは、思春期に活動が活発になるアポクリン汗腺の分泌が、皮膚の常在菌に分解されて特有のにおいが生じる状態です。本記事では、何歳ごろから気になり始めるのか、保険適用の手術をどの段階で検討するのか、受診の目安を整理します。
お子さんの脇のにおいは、年齢だけでは判断できません。汗や衣類、皮膚の状態など別の原因であることも多く、ワキガだった場合も、セルフケアで十分なのか、治療を考える段階なのかは、状態によって変わります。
この記事の要約
- においが目立ち始める時期と、年齢よりも成長の進み具合が目安になる理由
- 保険適用の手術(皮弁法)を検討する条件と、当院が年齢の下限を設けていない理由
- 受診のタイミングと、家庭でできる対策
セルフケアで改善しにくい場合や、お子さんご本人の負担が大きい場合は、大阪・天六で保険適用のワキガ手術に対応するかもがわクリニックなど、皮膚科・形成外科へのご相談をご検討ください。
本記事は、かもがわクリニック院長 鈴木義久(形成外科専門医・医学博士。京都大学大学院医学研究科形成外科診療科長、滋賀医科大学形成外科学講座初代特任教授などを歴任し、粉瘤・ワキガの保険適用日帰り手術を専門に大阪・天六で診療)が執筆・監修しています。
子どものワキガは何歳から?発症時期の目安

「何歳からワキガになるのか」は、多くの親御さんが最初に気にされる点です。ただ、年齢そのもので線を引くことは難しく、体の成長の進み具合が目安になります。
思春期(第二次性徴)前後から目立ちやすい理由
ワキガ(腋臭症)特有のにおいには、アポクリン汗腺という汗腺が関係しています。アポクリン汗腺は生まれたときから体にありますが、思春期に性ホルモンの分泌が増えるのにともなって働きが活発になるとされています。この汗腺からの分泌物には脂質やたんぱく質が含まれ、皮膚の常在菌に分解される過程で特有のにおいが生じます。
そのため、においが気になり始める時期は、暦の上の年齢よりも、第二次性徴がどこまで進んでいるかと関係しやすいと考えられます。当院では、次の点を診察の目安にしています。
- 脇の毛が生えてきているか(生えていない段階では判断が難しい)
- ワキガ特有のにおいがあるか(汗で蒸れたにおいとは別)
- 汗の量と、においのどちらが主な困りごとか
小学生・低学年でにおう場合
小学生、とくに低学年のお子さんでも、脇のにおいが気になるというご相談はあります。成長のスピードには個人差があり、同じ学年でも第二次性徴の始まる時期には幅があるためです。
ただしこの年代では、ワキガ以外の要因が関係していることも少なくありません。運動後の汗のにおい、衣類に残ったにおい、皮膚の赤みやかゆみといった肌トラブルなど、原因が別のところにある場合です。「まだ低学年だからワキガのはずがない」とも「もう高学年だから必ずそうだ」とも言い切れないため、まずは何が起きているのかを整理することが近道になります。
「急ににおい始めた」と感じるのはなぜか
「これまで気にならなかったのに、最近になって急ににおうようになった」と感じる方は多くいらっしゃいます。
思春期前はおもにエクリン汗腺からの汗が中心で、ほとんどが水分のためにおいは少ないものです。思春期に入ってアポクリン汗腺の働きが加わると、においのもとになる分泌が増えます。急に体質が変わったというよりも、もともとあった汗腺が働き始めたことによる自然な変化と考えるとわかりやすいかもしれません。お子さんの努力不足や不潔さのせいではありません。
『お子さんのにおいのご相談で、私がまず確認するのは、ワキガ特有のにおいがあるかどうかです。汗をたくさんかいて蒸れたにおいと、ワキガのにおいは別のものです。
もうひとつ見ているのが、体の成長の段階です。脇の毛がまだ生えていないお子さんの場合は、判断が難しいことが多く、もう少し成長を待ってから改めて診ましょうとお伝えすることがあります。年齢で決められるものではありません。』
かもがわクリニック院長 鈴木義久(形成外科専門医)
「におう=ワキガ」とは限らない|汗・多汗症・皮膚トラブルとの違い

脇のにおいが気になると、まずワキガを思い浮かべる方が多いと思います。ただ、実際に診察をしていると、においの原因がほかにあるお子さんも少なくありません。原因が違えば必要な対策も変わりますので、混同されやすいものを整理します。
| 主な特徴 | 見分けの手がかり | |
|---|---|---|
| ワキガ(腋臭症) | アポクリン汗腺の分泌によるにおい。においが脇に集中する | 汗の量に関係なく特有のにおいがある。衣類の脇が黄ばみやすい |
| 汗のにおい | 運動後や蒸れで一時的に強くなる | 時間帯や場面でにおいの強さに差がある |
| 多汗症 | 汗の量が多く、衣類が濡れる | 困りごとが「におい」より「汗の量」 |
| 皮膚炎・毛のう炎 | 脇の赤み・かゆみ・ぶつぶつ | 制汗剤や自己処理のあとに悪化している |
| 衣類の生乾き臭 | 洗濯後に汗の成分やにおいが残る | 着替えるとにおいが変わる |
このうち多汗症は、ワキガとは別のものですが、両方が重なっている場合もあります。汗の量が主な困りごとの場合は、多汗症としての対応を検討します。多汗症とワキガの違いと治療については、脇汗を止める方法|多汗症とワキガの違いと治療法で詳しく解説しています。
皮膚に赤みやかゆみがある場合は、においへの対策より先に皮膚の状態を整えることが必要です。制汗剤が肌に合わずに炎症を起こし、それがにおいの原因になっているケースもあります。
ご家庭で完全に判断する必要はありません。「においが脇に集中しているか」「汗の量とにおいのどちらで困っているか」「肌が荒れていないか」の3点を意識して様子を見ていただくと、ご相談がスムーズです。判断がつかない場合も、そのままお伝えいただければ診察で一緒に整理します。
受診の目安|セルフチェックと何科に行くか

「病院に行くほどのことなのか」と迷われる方は多くいらっしゃいます。においの悩みはデリケートで、周囲に相談しにくいためです。ここでは、受診を検討する目安と、どこに相談すればよいかを整理します。
セルフチェックリスト
- ご家族や周囲の方から、においを指摘されたことがある
- 脇の部分の衣類に、黄ばみやにおい残りが出やすい
- 制汗剤やデオドラントを使っても、変化が乏しい
- 学校や習い事など、対人の場面で強い不安が続いている
- 汗の量が多く、着替えが必要になるなど生活上の困りごとが大きい
- 耳あかが湿っているタイプである
当てはまる項目が多いから重症、少ないから軽症、というものではありません。最後の項目はワキガの体質と関連があるとされているものですが、これだけでワキガとは言えませんので参考のひとつとお考えください。ご自宅でのにおいの確認方法は、ワキガのセルフチェック方法で詳しくご説明しています。
こんなときは一度ご相談ください
チェックリストとあわせて、次の状況では診察を受けていただくことをおすすめします。
家庭でのケアを続けても変化が乏しい場合、脇の皮膚に赤みやかゆみがある場合、そしてお子さんご本人が強く気にしている場合です。医学的にはにおいが軽い、あるいは別の原因ということもありますが、ご本人の不安が続いていること自体が、相談する十分な理由になります。診察で状態を確認することが安心につながる場合もあります。
何科を受診する?
お子さんのワキガの相談は、皮膚科または形成外科が窓口になります。まず「ワキガかどうか」「汗の量の問題か」「皮膚トラブルか」を整理するのが皮膚科・形成外科の役割で、手術を含めた治療を検討する場合は形成外科が対応します。かかりつけの小児科で相談することもできますが、手術が必要かどうかの判断や実施は、一般的に形成外科が担当します。
かもがわクリニックは皮膚科と形成外科を併設しており、原因の整理から手術まで一か所で相談できます。受診先の選び方は、ワキガは何科を受診するかの記事もあわせてご覧ください。
宿泊行事・部活の前は早めに
修学旅行や林間学校などの宿泊行事、部活動の合宿、夏場の体育の授業など、においが気になりやすい場面は定期的に訪れます。とくに手術を検討する場合、術後は腕や肩の動きを制限する期間が必要になるため、行事や大会の日程との調整が欠かせません。
直前になってからのご相談では、対応できる選択肢が限られてしまうことがあります。すぐに治療を始めるかどうかは別として、まず状態を確認しておく、という受診の仕方でも構いません。
家庭でできる対策と学校生活の工夫

診察を検討している間も、ご家庭でできることがあります。ワキガのにおいは、アポクリン汗腺からの分泌と皮膚の菌の働きが関係して生じるため、ケアはこの仕組みに沿って組み立てます。
- 汗のケア:帰宅後の入浴やシャワーで脇を洗い、汗はこまめに拭く。乾いたタオルより、水道水で濡らしたタオルのほうが汗の成分を落としやすい
- 洗いすぎない:石けんは一日一回程度、やさしく洗う。ゴシゴシ洗うと皮膚が荒れて、かえって状態が悪くなることがある
- 汗拭きシートは様子を見ながら:アルコールや香料でかぶれるお子さんが少なくない。赤みやかゆみが出たら中止する
- 衣類:吸湿・速乾素材の肌着を選び、替えを用意する。洗濯は脇のつけ置き洗いと十分な乾燥を
- 学校の持ち物:体育や部活のあとに使える濡れタオルと替えの肌着を持たせる
なお、においを気にして水分を控えてしまうお子さんもいらっしゃいますが、体調に関わりますので、水分は普段どおりとり、汗をかいた後のケアで対応するほうが安全です。
周囲は気づいていないのにご本人だけが強く気にしている場合は、対策を増やすことがかえって不安を強めることもあります。一度診察で客観的に状態を確認しておくと、次にどうするかを考えやすくなります。学校で指摘を受けたことがきっかけの場合は、においは体の成長にともなう自然な変化で、本人の努力不足や不潔さのせいではないという点を、ご家族から伝えていただければと思います。
こうしたケアで気にならなくなるお子さんもいらっしゃいます。一方で、セルフケアはにおいのもとになる分泌物や皮膚の菌に働きかけるものであって、アポクリン汗腺そのものに対応するものではありません。続けても変化が乏しい場合や、ご本人の負担が大きい場合は、次にご説明する治療の選択肢を含めて検討する段階です。
保険適用の手術は何歳から検討する?

「子どもに手術なんて」と感じられる方もいれば、「早く楽にしてあげたい」と考えられる方もいらっしゃいます。当院では、負担の少ない方法から順に検討したうえで、手術が選択肢になる場合の考え方をご説明しています。
年齢の下限は設けていない。条件はご本人の意思
当院では、ワキガ(腋臭症)に対する手術として皮弁法(皮下組織剥離法)を行っています。脇の皮膚を裏返すようにして、においのもとになるアポクリン汗腺を目で確認しながら取り除く方法で、長年行われてきた保険診療の対象となる術式です。
手術を受けられる年齢の下限は設けていません。成長のスピードには個人差があり、「何歳から」と一律に線を引くことができないためです。そのうえで、当院には手術を行ううえでの必要条件があります。お子さんご本人が、手術を受けたいと思っていることです。
皮弁法は局所麻酔で行います。眠っている間に終わる手術ではありませんので、手術の内容を理解し、納得したうえで臨んでいただくことが欠かせません。親御さんが強く希望されていても、ご本人が乗り気でない場合は時期を改めることをおすすめしています。逆に、ご本人の意思がはっきりしている場合は、年齢だけを理由にお断りすることはありません。
保険適用の条件と費用の目安
皮弁法は、においが日常生活や対人関係に支障をきたす程度であると医師が判断した場合に、健康保険の適用となります。当院では自費でのワキガ手術は行っておらず、保険が適用されるかどうかは診察のうえで判断します。
費用は、3割負担の方で両側およそ5万円台(麻酔費を含む)が目安で、術前の血液検査や処方薬の費用が別途かかります。お子さんの場合、大阪市のこども医療費助成制度など、年齢に応じた助成の対象となり、窓口での負担が下がることがあります。
リスクとダウンタイム
手術である以上、あらかじめ理解しておいていただきたい点があります。
- 傷あと:脇に線状の傷あとが1本残る。時間とともに目立ちにくくなるが、完全にはなくならない
- 血腫:皮膚の下に血液がたまりやすい術式のため、術後5日〜1週間程度は腕や肩の動きを制限する。この期間は体育や部活動を休む必要がある
- 感染・知覚の変化:まれに傷の感染や、皮膚の感覚の一時的な変化が起こる
- 効果の個人差:においが完全になくなることをお約束するものではない
手術は日帰りで、所要時間は1〜1.5時間程度です。両脇を同時に手術すると日常生活への影響が大きくなるため、片方ずつ時期をずらして受けられる方も少なくありません。学校行事や部活動の予定に合わせて調整できますので、ご相談ください。
汗の量が主な困りごとの場合
多汗症に対しては、当院ではボトックス注射を行っています。ただし、重度の原発性腋窩多汗症に保険が適用されるのは原則として15歳以上で、それより年齢が低いお子さんは対象となりません。また、この治療は汗の量に対するものであり、ワキガのにおいに対するものではありません。
『お子さんの手術についてご相談を受けるとき、私がいちばん大切にしているのは、ご本人がどう思っているかです。皮弁法は局所麻酔で行う手術ですから、眠っている間に終わるわけではありません。手術の内容を理解して、自分で受けたいと思っていることが必要条件になります。
親御さんが心配されるお気持ちはよくわかります。ただ、ご本人がまだ気持ちの整理がついていないようであれば、無理に急ぐ必要はありません。まずは状態を確認して、選択肢をお伝えするところから始めましょう。』
かもがわクリニック院長 鈴木義久(形成外科専門医)
お子さんのにおいのご相談
TEL:06-6809-6088/保険適用になるかどうかの確認からご相談いただけます
よくある質問
Q1. 子どものワキガ手術に保険は使えますか?費用はどのくらいですか?
においが日常生活や対人関係に支障をきたす程度であると医師が判断した場合、皮弁法は健康保険の適用となります。当院では自費での手術は行っておらず、適用の可否は診察のうえで判断します。費用は3割負担で両側およそ5万円台(麻酔費を含む)が目安で、術前の血液検査や処方薬の費用が別途かかります。お子さんの年齢によっては、こども医療費助成制度で窓口負担が下がることがあります。
Q2. 何歳から手術を受けられますか?
当院では年齢の下限を設けていません。成長のスピードには個人差があり、年齢で一律に線を引くことができないためです。ただし、局所麻酔で行う手術ですので、お子さんご本人が手術の内容を理解し、受けたいと思っていることが必要条件になります。ご本人の気持ちの整理がついていない場合は、時期を改めることをおすすめしています。
Q3. 汗が多いのはワキガですか?
汗の量が多いことと、ワキガ(腋臭症)は別のものです。においが困りごとであれば腋臭症、衣類が濡れるなど汗の量そのものが困りごとであれば多汗症として考えます。両方が重なっている場合もあります。多汗症に対するボトックス注射は、保険適用が原則15歳以上で、ワキガのにおいに対する治療ではありません。
Q4. 親がワキガだと、子どもも必ずワキガになりますか?
必ずそうなるわけではありません。ワキガのにおいには遺伝子の個人差が関係しているとされ、ご家族に同じ体質の方がいる場合はお子さんも受け継ぐことがあります。ただし、体質を受け継ぐことと、においが実際に気になるレベルになることは同じではありません。遺伝の仕組みについては、ワキガの原因と遺伝・アポクリン腺の仕組みで解説しています。
Q5. 受診のときに準備しておくとよいことはありますか?
いつ頃から気になり始めたか、運動したときだけか一日中か、衣類に黄ばみが出るか、ご家族から指摘されたことがあるか、これまで試した対策とその変化、脇の皮膚に赤みやかゆみがないか、をメモしておいていただくと診察がスムーズです。あわせて、お子さんご本人がどう感じているかもお聞かせください。
まとめ|まずは「ワキガかどうか」の見極めから

お子さんの脇のにおいについて、発症時期の目安、受診のタイミング、保険適用の手術の考え方を整理しました。最後に要点を振り返ります。
- においが目立つ時期は、年齢よりも第二次性徴の進み具合と関係する。脇の毛が生えているかが診察の目安のひとつ
- 脇がにおうからといってワキガとは限らない。汗・多汗症・皮膚炎・衣類など、原因が違えば対策も変わる
- 家庭でのケアはにおいのもとに働きかけるが、アポクリン汗腺そのものには対応しない
- 当院の皮弁法は保険診療で、年齢の下限は設けていない。条件はご本人が手術を受けたいと思っていること
- 傷あと・血腫・術後5日〜1週間の安静など、あらかじめ理解しておきたい点がある
すぐに治療を決めなければならないわけではありません。状態を確認して選択肢を知っておく、という受診の仕方でも構いません。宿泊行事や部活動の予定が控えている場合は、日程に余裕をもってご相談いただくと、検討できる選択肢が広がります。
かもがわクリニック(大阪市北区・天六)では、皮膚科・形成外科の医師が連携し、お子さんのにおいのご相談から保険適用の手術まで対応しています。お困りのことがありましたら、一度ご相談ください。
においの悩みは、まず状態を整理することから
TEL:06-6809-6088/天神橋筋六丁目駅 徒歩1分
